なにかが、変わった。
二人の演奏を聴き、終わった後に残ったのは、そんな感想だった。
もちろん、二人のデュオは完璧で、音楽の出来に対する賛辞の言葉は底をつきそうも
なかった。ただ、最初にふと頭に浮かび、最後まで残ったのは、そんな一つの抽象的な
答えだけだった。
「そういえば、初めて聴いたんでしたっけ、この曲」
ファルさんの言葉に、はっと意識を引き戻される。
「ええ。リセルシアが練習しているのは何度も聴いていますが、ファルさんの歌を合わ
せての演奏は、初めてでしたね」
「ありがとう、アーシノさん」
「お礼を言われることは、特になにも」
「あなたのつけてくれた歌詞、とても綺麗ですよ。リセの作った曲に、とっても合ってる」
振り返り、ファルさんはリセルシアにほほえみかけた。リセルシアは再び頬を染める。
「感謝しなければならないのは、俺の方ですよ。俺が書いた詩が、コンサートで歌われ
るなんて、どれだけ光栄なことか」
きっかけは、リセルシアの練習している曲に、ぱっと思いついた歌詞を乗せて歌って
みたことだった。リセルシアは驚いたように俺の顔を見つめ、それから「綺麗な歌詞で
すね」と言ったんだった。その後、卒業後に疎遠になっていたファルさんから連絡があ
り、この曲の歌詞を書いてくれと頼まれたのは、本当に俺にとってもラッキーなことだ
った。だからこそこうして今、ファルさんと同じ時間を過ごせている。なにより、わず
かであっても彼女の役に立てている。
「ありがとう、アーシノさん」
ファルさんはもう一度そう言い、隣のリセルシアにも、ささやくように「ありがとう」
と言った。
|